「実は、妹さんが体育祭の全体練習中に倒れられて。今、救急搬送先の病院に……」
そこから先は、あまり覚えていない。
母の職場に『琴葉が病院に運ばれた』とだけメッセージを送って、気づいたら、制服のまま自転車を漕いでいた。
ボールはたぶん、体育館の隅に転がったままだ。
椎名彩葉と、椎名琴葉。私たちは、双子の姉妹だ。中学二年生、十四歳。数分早く生まれた私が姉で、琴葉が妹。
一卵性双生児だからか、顔立ちはそっくりだと言われる。でも、それ以外は、まるで正反対だった。
私は昔から、じっとしているのが苦手だった。走って、転んで、泣いて、また走る。髪も、動きやすさだけを考えて、肩につかないショートヘアにしている。
琴葉は、静かに絵本を読んでいるような子だった。腰まで伸ばしたサラサラの黒い髪を、いつも丁寧な三つ編みにしている。
小学校の通知表を並べると、大人たちはいつも同じことを言った。
『彩葉ちゃんは、元気があっていいわね』
『琴葉ちゃんは、本当に優秀ね』
悪気はなかったと思う。でも、その何気ない言葉は、小さなトゲになって、ずっと私の胸に刺さっている。たぶん、誰も知らないけれど。



