──体育祭の実行委員、か。
書き忘れ? それとも、琴葉にも何か事情があるの?
始業のチャイムまでは、まだ少し時間がある。私は下駄箱の陰に隠れるようにして、スマホを取り出した。
『実行委員って何!? ノートに書いてなかったんだけど!』
送信すると、思ったよりすぐに既読がついた。
『ごめん! 書き忘れてた!』
『体育祭の実行委員は、わたしが立候補したの。選考は、行事への取り組みも見られるから』
『ポニーテールの子なら、たぶん北条さん。同じ実行委員の子だよ。大きな仕事は、まだないはずだから、心配しないで』
ベッドの上で打っているのだろう。琴葉の文面は、いつもどおり丁寧だけど、少しだけ焦って見えた。
『了解。とにかく、乗り切る』
そう返して、スマホをしまう。
立候補まで、してたんだ。琴葉は本当に、全部をあの選考のために使っていたんだ。
上履きに履き替えて、私は廊下を歩き出す。ピカピカに磨かれた木の床は、歩くたびに、きゅっと小さく鳴った。
壁には、風景画が同じ間隔で飾ってある。
教室のドアの前で、私は深く息を吸った。
大丈夫。あと四十五日。
引き戸を開けると、一番近くの席にいた女の子が、ふわりと笑った。明るい茶色の髪をゆるいハーフアップにした、垂れ目の子。



