「嬉しいけど、瑛くんは病院の跡取りとして、いろいろ忙しいんじゃないの?」
「時間くらい、作る」
そっけない言い方の中に、確かな約束が含まれている気がした。
「……前に言ってた、外国の医療を見てみたいって話。あれから、本気で考えてるの?」
「まだ、父さんには話してない。まだ迷ってる部分もあるけど……できるなら、いつか」
瑛くんは、少し遠くを見るような目をした。
「彩葉と……同じ高校に通ってから、その先の話だけどな」
「瑛くん……」
彼の言葉に胸が甘く鳴ったそのとき、空に最初の花火が打ち上がった。
大きな音のあと、色とりどりの光が、夜空いっぱいに広がっていく。
「きれいだね」
「……うん」
隣で瑛くんの手が、そっと私の手に重なった。指を、ゆっくりと絡めてくる。
心臓が、跳ねる。でも、振りほどきたいとは少しも思わなかった。
私はその手を、そっと握り返す。
隣を見ると、瑛くんも花火を見上げていた。その横顔を、私はしばらく見つめていた。
嘘から始まった、四十五日間。そこから続いた、たくさんの出来事。全部が今、この瞬間につながっている。
「彩葉」
不意に名前を呼ばれて、私は隣を見た。
「これから、よろしく」
「……こちらこそ、よろしく」
夜空にまた一つ、大きな花火が咲いた。二人分の影が、川面に映る光の中で、静かに寄り添っていた。



