言い終えると、加賀見くんはしばらく何も言わなかった。それから、耳まで赤くして、視線を横にそらした。
「……最後の言葉は、俺が言いたかったのに」
「ふふ、なにそれ」
自然と、笑いがこぼれる。加賀見くんは照れ隠しのように、こほん、と、咳払いをした。
それから、思い出したように言った。
「あのさ。もう、『加賀見くん』は、やめないか」
「え?」
「ずっと、他人行儀な感じがしてた。……これからは、瑛でいい」
「じゃあ……瑛、くん?」
口にした瞬間、自分の声が少しうわずった。
「くん、はいらない気もするけど……まあ、いいか」
瑛くんはそう言って、ふっと笑った。呼び方一つ変えただけなのに、二人の間の距離が、ぐっと近くなった気がした。
「あのさ。このあと、時間あるか」
「うん、特に何も予定はないけど」
「花火大会、今日だろ? 近くの河川敷であるやつ」
「え、行くの?」
「お前と行きたいんだ」
短い一言だったけれど、その声には迷いがなかった。



