校長先生の声は、優しくなかった。
「これで、罪が消えるわけではありません。噓は、噓です。それは変わりません」
体育館で聞いた言葉より、もっと重く、その一言が胸に響いた。
「ただ、自分たちから名乗り出たこと。学園や生徒に迷惑をかけず、むしろ、多くの生徒に支えられていたこと。それらを考慮します」
校長先生は一度、目を閉じてから告げた。
「本来、椎名彩葉さん。あなたは本学園の生徒ではありません。ですから、学園として処分する権限はないのです」
私は少し戸惑った。
「ですが、ご両親とも、すでにお話しました。学園としての正式な処分ではなく、けじめとして、内々にお願いしたいことがあります」
校長先生は、両親のほうを見た。父が首を縦に振った。
「椎名琴葉さんについては、本学園の生徒として、反省文の提出を求めます」
隣で、琴葉が深く頭を下げた。
「彩葉さんについては、反省文に代えて、夏休み中、一ヶ月間、奉仕活動をお願いします。場所は、『みどりの回廊』の温室と花壇。琴葉さんの退学は、なしです」
心臓が、小さく跳ねた。
温室……あの、加賀見くんが誰にも言わずに大事にしていた場所だ。
母が隣で、小さく息をのむのが分かった。父が、私の肩にそっと手を置いた。
「ありがとう、ございます」
私は、深々と頭を下げた。今度は、演技でも逃げでもない、心からのお辞儀だった。



