終業式のあと、私は再び校長室に呼ばれた。両親も一緒だった。
「椎名彩葉さん」
校長先生はまっすぐ、私を見た。
「あなたの行為は、学園の規則に照らせば、重大な違反です。本来であれば、退学も考えなければいけないことでした」
退学。その二文字が、頭の中で、じわりと広がっていく。
もしそうなったら、この学校に、二度と来られなくなる。
加賀見くんとも、紬さんとも、日和ちゃんとも、簡単には会えなくなるかもしれない。何より、琴葉が積み上げてきたものに、消えない傷を残してしまう。
胸が、すっと冷たくなる。
指先が、震えていた。それでも私は、目をそらさずに校長先生を見返した。
「……はい」
声は、思ったよりまっすぐ出た。
「処分は、受け入れます」
校長先生は、しばらく何も言わなかった。
長い沈黙の間、隣で母が息を止めているのが分かる。私はただ、結果を待つことしかできなかった。
そのとき、ドアが控えめにノックされた。
「失礼します」
入ってきたのは、日和ちゃんと北条さんだった。
「校長先生。これを、見ていただきたくて」
机の上に置かれた分厚い紙の束には、クラス全員、実行委員、生徒会の署名がびっしりと並んでいた。
「椎名さんがいなかったら、体育祭のリレーも、進行も、成り立ちませんでした」
紬さんが、廊下から部屋に入ってきた。いつの間にか、彼女も来ていたらしい。
校長先生は、署名の束をしばらく見つめていた。それから、顔を上げた。
「気持ちは、受け取ります。ですが……」



