「選ばれたのは──二年A組、宮川紬さん。そして、椎名琴葉さん」
一瞬、間があって、それから大きな拍手が、体育館いっぱいに広がった。
隣に座っていた紬さんが、私と目を合わせた。それから、少し離れた席の琴葉のほうを見て、にっこりと笑った。
「琴葉さんと一緒に行けるの、嬉しいわ」
琴葉の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
校長先生は、拍手が収まるのを待ってから続けた。
「補足します。今回の選考にあたり、六月中旬から今日までの記録は、評価の対象から、除外しました。それ以前の一年間の実績と、医師の意見書による特例をもって、判断しています」
校長先生の視線が一瞬、私のほうに向いた気がした。
「この期間、椎名琴葉さんとして評価されていた出席や成績、行事への取り組みは、椎名琴葉さん自身の記録としては、認められません。誤解のないよう、この場で明確にしておきます」
体育館が、ざわめいた。何人かの生徒が、私のほうを振り返る。
好奇心なのか、非難なのか、その視線の意味をうまく読み取れなかった。
恥ずかしさで、うつむきそうになったけれど、顔を上げたまま、その視線を受け止めることにした。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。あの体育祭の疾走も、期末試験の十二位も、勉強会の日々も。全部、なかったことになる。
それでも、と私は思う。
あの日々は、確かにあった。私の足で走って、私の頭で考えて、積み上げてきたものだ。
琴葉の記録にはならなくても、私の中にはちゃんと残っている。



