明凰学園の最寄り駅で電車を降りると、夏の日差しが、じりじりと肌を焼いた。蝉の声が、駅前の並木から一斉に降ってくる。
校門の前まで来ると、琴葉が足を止めた。
「……大丈夫?」
「うん。行ける」
琴葉はそう言って、私のほうに小指を差し出した。
「約束、覚えてる?」
「もちろん」
私はその小指に、自分の小指を絡めた。
「四十五日たったら、ちゃんと元気になって、自分の足で学校に戻ること」
「彩葉ちゃんとの約束、守るよ」
二人の指が、するりとほどける。琴葉は深く息を吸って、一歩、踏み出した。
自分の足で、校門をくぐっていくその後ろ姿を、私はじっと見つめていた。
少し離れたところに、日和ちゃん、紬さん、北条さん、望月くんが立っていた。
誰も声をかけず、ただ静かに見守っている。
望月くんは寂しそうに笑い、私と目が合うと、健闘を祈るように親指を立ててみせた。
その仕草に、胸の奥がふわりと温かくなった。
正門の脇、木陰のところに、加賀見くんの姿もあった。真っ直ぐこちらを見ている。目が合うと、ゆっくりと頷いてくれた。
私は琴葉の隣に並んで、校門をくぐった。
四十五日ぶりの制服姿の妹と、初めてありのままの姿で立つ私。どちらも本物の自分として、そこにいた。



