翌日の放課後。私は琴葉と二人で、藤原先生のところへ向かった。
職員室の入り口で一度、深呼吸をする。琴葉が、私の手を取った。
「大丈夫。わたしも、ここにいるから」
私は、握り返した手に力をこめた。
藤原先生の前で、私は自分の言葉で、すべてを話した。
琴葉が過労で倒れたこと。選考のために、私が代わりに通っていたこと。体育祭のことも、勉強のことも、隠さず全部。
「隠していて、すみませんでした」
深く頭を下げる。隣で琴葉も、腰を折っていた。
藤原先生は、途中で何度か口を開きかけて、そのたびに閉じた。話し終えたとき、先生の指は、机の上でかすかに震えていた。
「……そう。話してくれて、ありがとう」
責める言葉は、なかった。それが、かえって胸に刺さった。
先生はしばらく目を伏せてから、静かに立ち上がった。教頭先生の元へ報告に向かうその背中が、いつもより小さく見えた。
◇
学校からの帰り道。私と琴葉は、二人並んで歩いていた。夕暮れの空が、少しずつ色を変えていく。
「……琴葉。話さなきゃいけないことが、あるの」
琴葉は、隣で静かに耳を傾けてくれている。
「実は、加賀見くんに好きだって告白された」
琴葉の足が、ピタリと止まった。
「そして、私も……同じ気持ちなの。ずっと隠しててごめん。琴葉が、先に『好き』って教えてくれていたのに」



