身代わり特待生、はじめました。~双子の妹のフリして、御曹司に恋してます~


「体育祭の夜にメッセージを送ったあと、琴葉さん本人に病室で確かめた。そしたら、彼女に頼まれたんだ。『彩葉ちゃんには、気づいてるって言わないで。知らないフリをして欲しい』って」

「琴葉が……」

「言ったら、お前はもっと一人で抱えこむだろうって。琴葉さんもそう思ったんだと思う」

風が、花壇の花をゆらしていく。

「腹立つよな。俺が、ずっと知ってて黙ってたなんて」

「……ちょっとだけ」

正直に、答えた。腹立たしさと、それでもずっと、黙って見守ってくれていたことへの嬉しさが、胸の中でぐちゃぐちゃに混ざり合っている。

加賀見くんは、困ったように微笑んだ。

「でも、今、お前は自分から先生に話そうとしてる。それが一番、大事なことだと俺は思う」

その言葉に、目の奥が熱くなった。

「……それで、父に頼んでおいた。琴葉さんの治療経過と、今回のことについて、医師としての意見書を書いてもらう。ご両親への了承は、父から取ってくれる。お前たちが、少しでも不利にならないように」

「そこまで……」

「俺に、できるのはこれくらいだから」

ぶっきらぼうに言って、加賀見くんはまた花壇のほうを向いた。

しばらく、二人とも何も言わなかった。花壇の向こうで、白衣のスタッフが、水やりをしている音だけが、静かに聞こえていた。

「……あのさ」

加賀見くんが、改まった声で言った。それから、珍しく少し視線を泳がせた。