「……最初から?」
「琴葉さんが倒れて、父の病院に運ばれてきた日の夜。ウィッグをつけていない、ショートヘアのお前と病院の廊下で会っただろ」
息が、詰まった。
あの日の、売店までの道を教えてくれた男の子。『人違いかと思って』と、目を見開いて言い直した、あの一瞬。
──やっぱり。あのとき、もう変だと思われていたんだ。
「あの日、『人違いかと思って』って、言ってたよね。あれ、噓だったの?」
「……半分は。まさか双子だとは思わなかったけど、椎名さんにそっくりすぎて、ずっと引っかかってたんだ」
加賀見くんは少し、ばつが悪そうに続けた。
「次の日の朝、学校で三つ編みの『椎名さん』を見て、おかしいと思った。琴葉さんは、前の夕方にうちの病院に運ばれたばかりだった。翌朝、元気に登校してくるはずがない」
言葉が、すぐには出てこなかった。
「で、階段でお前が北条さんの資料をキャッチしたのを見て、完全に確信したんだ。運動が苦手な琴葉さんにあんな反射神経はないし、何より顔つきが全然違った。だから、放課後の実行委員も、お前と話したくて俺からペアに頼んだんだ」
──やっぱり。
体育祭でのあの鋭い視線も、「素に近い」と言われたあの瞬間も。勘違いなんかじゃなかった。
加賀見くんは最初から、私(彩葉)を見抜いた上で隣にいたんだ。
「……加賀見くんは、ずっと知ってて、騙されてるフリをしてくれてたの?」
声が震える。責める気持ちと、それだけじゃない、もっと複雑な感情が一気にあふれてきた。
「今までの日々、全部……知った上で、見てたってこと? 私が、必死にウィッグを直したり、噓をついたりしてるのを?」
加賀見くんはしばらく、庭園の花壇を見つめていた。



