「あの子、ずっと一人で頑張ってきたの。特待生でいるために。留学のために。……私は、その代わりをちょっとだけ、やらせてもらっただけ」
「ちょっとだけ、って言うには、大事すぎる話だけどね」
紬さんが、鼻を鳴らす。それでも、その目はもう責めているようには見えなかった。
「先生には、どうするの?」
日和ちゃんが、聞いた。
「……まだ、言い逃れできるかもしれない。証拠、はっきりしてるわけじゃないし」
言った瞬間、自分でも嫌な感じがした。紬さんが、呆れたように眉をひそめる。
「それ、あなたらしくないわね。バトンのときと同じよ」
その一言が、胸にまっすぐ刺さった。
その日の放課後。この話を、北条さんにも伝えた。
教室に残っていた北条さんは目を丸くして、しばらく口をパクパクさせていたけれど、やがて、ぎゅっと私の手を握りしめた。
「そっか……そういうことだったんだ。でも、彩葉ちゃんが、実行委員、あんなに頑張ってくれたのは、本当だもんね。わたし、それだけは分かってる」
◇
その夜。家に帰った私は、机の上のノートを開いた。数字を書き換えようとして、手が止まる。
【選考日まで あと3】



