「……あたしの家、宝飾ブランド……宝石のお店を、何店舗か経営してるの。跡取りとして、『結果を出し続けなさい』って、ずっと言われて育った」
紬さんは、窓の外を見つめる。
「一位を取ることは、あたしにとって、選べることじゃなかった。だから、余計に悔しかったのかもしれない。あなたたちの事情も知らずに、勝手にライバル視してたこと」
その声には、これまで見せたことのない、素の弱さがにじんでいた。
「紬さんも、大変だったんだね」
「同情は、いらないわ」
紬さんは、すぐにいつもの強気な調子に戻った。それでも、その一瞬の吐露が、彼女の輪郭をわずかに柔らかくした気がした。
「彩葉ちゃんがちゃんと話してくれて、私、嬉しい」
日和ちゃんが、隣で目を潤ませながら、そっと私の手を握りしめてくれた。
すでに私の正体を知っている日和ちゃんは、ただ静かに、私と紬さんのやり取りを見守ってくれている。
心が、じんと温かくなる。二人の前で初めて、素の自分の言葉で話せた気がした。
「良かったら、琴葉のことも聞いてほしい」
私は話し始める。



