その言葉を聞いた瞬間、これ以上、ごまかしても無駄だと悟った。
「……いつから?」
観念して聞き返した声は、自分でも驚くくらい小さかった。
「うすうすは、ずっと」
日和ちゃんは、テラスの手すりに寄りかかった。
「琴葉ね、ピーマン、苦手だったよ。でも、さっきあなたはサラダ、全部、食べていたでしょ」
「あ……」
「それに、笑い方も少し違う。歩き方も」
日和ちゃんは、遠くを見るような目をした。
「体育祭の日、リレーの伝令で走ってたとき。『琴葉』って呼んだら、一瞬だけ、違う顔になったの。うまく、言えないんだけど……知ってる子と知らない子が、同時にいるみたいで」
「……そんなに前から」
「うん。でも、それが悪いことだとは、思わなかったの」
「ごめん。ずっと、黙ってて」
「まだ、理由は聞かない」
日和ちゃんは、まっすぐ私を見た。
「彩葉ちゃんが、話したくなったときでいい。ただ、これだけは言っておくね」
「なに?」
「私は、味方だから。彩葉ちゃんの味方でも、琴葉の味方でも、どっちでもあるから」
その言葉に、目の奥がじんと熱くなった。
「……ありがとう」
夜空を見上げると、月がぼんやりと、雲に隠れていた。
渡辺先生の視線がまだ、背中に張りついている気がした。



