家に帰った私は、ベッドに倒れ込んで、スマホを取り出した。
仲のいい友達のグループに、メッセージを打つ。
【ごめん! 急なんだけど、体調を崩しちゃって、しばらく学校も部活も休むことになりそう。治ったら、また連絡するね】
身代わりのことは、絶対に書けない。この秘密は、私一人で抱え込まなくちゃいけない。
送信ボタンを押すと、すぐに返信が届き始めた。
【えっ、彩葉大丈夫!? 無理しないでね】
【部活は気にしなくていいから、しっかり休んで!】
友達の優しさが、胸にちくりと刺さった。友達に、こんなに大きな嘘をつくのは、初めてだった。
ごめんね、と心の中で謝りながら、私はスマホを伏せた。
◇
机の上には、ウィッグの入った紙袋と、琴葉が病院で書いてくれたノートが、並べて置いてあった。
表紙には、几帳面な字で、こう書かれている。
『明凰学園 生活の手引き(彩葉ちゃんへ)』
タイトルを見ただけで、笑ってしまいそうになる。入院中に、ここまできちんとまとめるところが、いかにも琴葉らしい。
一枚目には、クラスの座席表と、担任の先生の名前。
二枚目には、時間割と、教科ごとの持ち物。三つ編みの結び方は、六コマのイラスト付きで、最後のコマの吹き出しには『ゆるいとバレるので、きつめに!』とあった。
「……用意周到すぎでしょ、あんた」
思わず、苦笑いがこぼれる。
三枚目には、『気をつけるべき人』の項目があった。



