うそ……。あの夜、美咲に頼んで消してもらったはずの投稿。誰かが、その前に見ていたなんて。
「体調のせいで、字も走り方も変わる、なんてこと、あるのかしらね」
答えられない。喉が、からからに乾いていく。
そのとき、少し離れた場所で日和ちゃんが、こちらを見ているのに気づいた。
表情が、こわばっている。日和ちゃんにも、先生の言葉が聞こえていたのかもしれない。
「……失礼するわ」
渡辺先生はそれだけ言うと、その場を離れていった。
◇
パーティーがお開きになったあと、私は中庭のテラスに出た。
青や紫のライトに照らされた噴水が、風が吹くたびに、きらきらと光の粒を散らしている。
会場から漏れるピアノの音と水音が、静かに重なり合っていた。夜風が火照った頬に、心地よい。
「彩葉ちゃん」
振り返ると、日和ちゃんが立っていた。琴葉の名前ではなく、私の本当の名前を呼んだのは、これが初めてだった。
心臓が跳ね上がり、指先の感覚が、すっと遠くなった。
バレてる? さっきの先生との会話を聞いていたから?
頭が真っ白になって、絶対に認めてはいけないという恐怖だけが勝った。
体が勝手に、いつもの嘘を繰り返そうとする。
「……な、なに? 彩葉ちゃんって、誰のこと?」
声が、うわずっていた。
日和ちゃんは何も言わずに、ただ、じっと、私を見つめていた。責めるのでも、急かすのでもない、静かな眼差しだった。
「とぼけないで。あなた、琴葉の双子のお姉さんだよね?」



