子どものはしゃぎすぎ、とでも言いたげな冷ややかな視線だった。
良かれと思ってしたことが、この場所では『行儀が悪い』と映ることもある。
場を和ませることが、いつも正解とは限らないのかもしれない。
そう思うと、さっきまでの誇らしさが、しゅんとしぼんでいくのを感じた。
とぼとぼ歩いていると、すれ違いざま、背中で声が聞こえた。
「椎名さんって、あんな感じだったっけ。いつも、もっと大人しいのに」
「病み上がりで、テンションおかしいんじゃない?」
くすくすと、忍び笑いが続く。振り返る勇気は、なかった。
胸の奥にちくりと、冷たい針が刺さったみたいだった。
目立つことは、笑いを生むこともあれば、こうして静かに、誰かの違和感を積み重ねることもある。
私はその『名門校の空気』を、まだうまく飲みこめずにいた。
「椎名さん」
振り返ると、タキシード姿の加賀見くんが立っていた。手には、グラスが二つ。
黒いジャケットが、いつもの制服とは、まるで違う雰囲気を出している。
大人っぽくて、かっこいい。



