身代わり特待生、はじめました。~双子の妹のフリして、御曹司に恋してます~


「それ、手でつまんで大丈夫よ」

見知らぬ上級生の女の子が、微笑みながらそっと耳打ちしてくれた。

フィンガーフードと呼ばれる手づかみで食べる料理だと、そこで初めて知った。

「あ、ありがとうございます」

恥ずかしさで顔が熱くなる。上級生は気にする様子もなく、自分の輪に戻っていった。

こんな些細なことすら知らないなんて。やっぱり、この場所に私は、不釣り合いなんじゃないか。

そう思いかけたとき、配膳係の生徒が、飾りのリボンに足を取られて、大きくよろけた。

──ガシャーン!

グラスが一つ、床に落ちて割れる。乾いた音が、会場に響いた。

一瞬、周りの視線が集まり、気まずい沈黙が流れる。配膳係の生徒は、真っ青な顔で立ち尽くしていた。

この空気、なんとかしなきゃ……!

とっさに私は、わざと大きめの声を出した。

「……あ。今の、絶対マナー減点ですね」

一瞬、誰も反応しなかった。しん、とした空気が流れる。

まずい。失敗した……?

そう思った瞬間、近くにいた生徒たちが、小さく吹き出した。

「ちょっと、今のは採点基準にないでしょ」

くすくすと笑いが広がる中、配膳係の生徒も緊張の糸がゆるんだように笑った。

「ありがとうございます。おかげで楽になりました」

「ううん。私もさっき、前菜の食べ方分かんなくて、先輩に教えてもらったばっかりだし!」

ほっとしたのも束の間、少し離れた場所にいた、来賓らしき年配の女性が、眉をひそめてこちらを見ているのに気づいた。