紬さんの指は、思いのほか器用だった。三つ編みのウィッグに、細かい編みこみを足して、あっという間に、パーティー仕様に仕上げていく。
特に指摘されることもなく、作業は無事に終わった。
「ふう」
こっそり、詰めていた息を吐き出す。
「琴葉。こういう髪は、いつも自分でやってたの?」
日和ちゃんが、鏡越しに聞いた。
「う、うん。まあ、練習したから」
嘘はもう、口が勝手に動くくらい、慣れてしまっていた。その滑らかさが、怖かった。
日和ちゃんは、明るいオレンジ色のドレスに、髪を高い位置でひとつにまとめていた。元気いっぱいの彼女らしい、はつらつとした雰囲気だ。
紬さんは、深いネイビーのドレスをまとい、緩くまとめた髪に、小さな真珠のピンを挿している。凛とした佇まいに、思わず見とれてしまう。
「できたわ」
紬さんが、鏡を覗きこむ。
「悪くないわね」
三人で、鏡の前に並ぶ。ドレス姿の自分たちが、いつもと違う顔をしていた。
「なんか、変な感じ」
「三人でこんなことするの、初めてだね」
日和ちゃんが、嬉しそうに笑う。その笑顔を見ていたら、胸の奥が温かくなった。
「そういえば」
紬さんが、鏡の中の自分の髪を軽く整えながら言った。
「留学の選考、もうすぐね。最後まで、油断しないでよね」
「あ……うん」
さらりと言われて、心臓が小さく音を立てた。ここ最近、目の前のことに必死で、日数を数える余裕さえなかった。
琴葉のフリをしていなければ私は、この二人とこんなふうに話したり、笑い合うこともなかったのだろうか。



