平和な国。

ザワザワとする教室。

みんなの気持ちはもう学校には無いのかもしれない。

とある男子たちのグループから聞こえてきたネットニュース。

「なんかまた近くの海にミサイル落ちたらしいぞ?」

「おっかねー!そういうのにうちら巻き込まないで欲しいよなー」

「なー!」

そんな話題も、夏の暑さに溶けていく。

開け放たれた窓から、少しだけ涼しさも感じる風が、教室を通り抜ける。

遠くで蝉が鳴き、校門辺りでは蜃気楼が揺らめいている。ちょっと暴力的な陽射しには加減がなくて、私は団扇にしていたノートで顔に日陰を作るのだった。

「ほーい、浮かれぽんち達、席つけー」

開いていた扉から、担任の先生がやってくる。

その手には、通知表が抱えられていた。

友だちとは喋っていたい。でも早く帰りたい。そんな様子で、出歩いていた子たちが席に帰っていく。

「浮かれぽんち達」は言い得て妙だなと思った。

そのくらい言われても仕方ないほどには、私も含めて、みんなの口角は緩みっぱなしだったんだろう。

「じゃあ、お待ちかねの通知表配って、耳タコにならん程度に夏休みの注意事項確認して、さっさと終わろうぜー」

白いTシャツの襟元をパタパタしながら、先生はちょっとダルそうに、だけどちょっと嬉しそうにそう言った。