闇に溺れて、君を奪う。

翌朝。
乃愛は教室の自分の席で、小さく息をついていた。

昨日のことが、まだ夢みたいだった。
星闇のアジト。
幹部たち。
そして、玲央のあの甘すぎる言葉。

思い出すたび、顔が熱くなる。

「小花衣さん」

不意に名前を呼ばれて、乃愛ははっと顔を上げた。

目の前に立っていたのは、同じクラスの男子だった。
たしか、委員会が一緒の真田 恒一。

「これ、昨日のプリント。休み時間に先生へ出すやつなんだけど、小花衣さん字きれいだから、まとめ書いてくれない?」

「あ、う、うん。いいよ」

乃愛がプリントを受け取ると、真田はほっとしたように笑う。

「助かった。やっぱ小花衣さん頼りになる」

その笑顔に、乃愛もつられてふわっと笑い返した。

「そんなことないよ。でも、できることなら手伝うね」

その瞬間。

教室の後ろの扉が、がらりと大きな音を立てて開いた。

空気が変わる。

何人もの視線が一斉にそちらへ向いた。
乃愛もびくっとして振り返る。

そこに立っていたのは、東堂玲央だった。

制服を少し着崩した姿。
鋭い目。
教室の空気ごと支配してしまうみたいな存在感。

ざわ、と女子たちがざわめく。

「え、東堂先輩……?」

「なんでうちのクラスに」

「やば、かっこいい……」

けれど玲央はそんな声には目もくれず、まっすぐ乃愛のところへ歩いてくる。