闇に溺れて、君を奪う。

夜の風は、少しだけ冷たかった。

人気のない歩道橋の上で、乃愛はぎゅっとバッグを抱きしめる。
遠くから響いてくるバイクの音に、胸がどくんと跳ねた。

嫌な予感がした。
今日はやけに静かで、静かすぎて、逆にこわい。

そのときだった。

背後で、低い声が落ちる。

「こんな時間にひとりで何してんの」

振り返った瞬間、乃愛の息が止まる。

黒いジャケット。
鋭い目つき。
夜に溶けるみたいな気配をまとったその人は、この街で知らない者はいない存在だった。

星闇の総長、東堂玲央。

「れ、玲央くん……」

名前を呼んだ途端、玲央の眉がぴくりと動く。
次の瞬間、彼は大きくため息をついて、乱暴そうに見える手つきで乃愛の腕を引いた。