中庭に出ると、昼のやわらかな風がみうの髪をふわりと揺らした。
さっきまで教室に満ちていたざわめきが嘘みたいに遠い。
聞こえるのは、木の葉が揺れる音と、少し速すぎる自分の鼓動だけ。
桜庭朔夜は、みうの手首を引いていた手をそっと離した。
けれど離れたはずなのに、まだそこが熱い。
「……ご、ごめんね」
みうが小さく言うと、朔夜が眉を寄せる。
「何が」
「その……学校まで来てもらっちゃって……」
「来たのは俺が来たかったからだ」
即答だった。
みうは目を丸くして、思わず朔夜を見上げる。
相変わらず綺麗な顔。
少し気だるそうなのに、みうを見る目だけが真っ直ぐで、胸の奥が落ち着かない。
「でも、みんなびっくりしてたし……」
「困ったか」
低い声で聞かれて、みうは言葉につまる。
困った。
たしかにすごく恥ずかしかった。
みんなに見られて、噂にもなると思う。
でも、それ以上に。
「……ちょっと、うれしかった」
みうが消えそうな声でそう言うと、朔夜の目がわずかに見開かれた。
風が吹く。
長い前髪が揺れて、その隙間からのぞく瞳がやけに熱っぽく見えた。
「白雪」
名前を呼ばれるだけで、胸がぎゅっとなる。
「それ、あんまり簡単に言うな」
「え……?」
朔夜は一歩、みうに近づく。
逃げる理由なんてないのに、みうはどきどきして後ろへ下がった。
けれど、すぐ背中が中庭の木に軽く触れる。
もう、下がれない。
朔夜はみうのすぐ目の前で足を止めた。
近い。
近すぎる。
さっきまで教室に満ちていたざわめきが嘘みたいに遠い。
聞こえるのは、木の葉が揺れる音と、少し速すぎる自分の鼓動だけ。
桜庭朔夜は、みうの手首を引いていた手をそっと離した。
けれど離れたはずなのに、まだそこが熱い。
「……ご、ごめんね」
みうが小さく言うと、朔夜が眉を寄せる。
「何が」
「その……学校まで来てもらっちゃって……」
「来たのは俺が来たかったからだ」
即答だった。
みうは目を丸くして、思わず朔夜を見上げる。
相変わらず綺麗な顔。
少し気だるそうなのに、みうを見る目だけが真っ直ぐで、胸の奥が落ち着かない。
「でも、みんなびっくりしてたし……」
「困ったか」
低い声で聞かれて、みうは言葉につまる。
困った。
たしかにすごく恥ずかしかった。
みんなに見られて、噂にもなると思う。
でも、それ以上に。
「……ちょっと、うれしかった」
みうが消えそうな声でそう言うと、朔夜の目がわずかに見開かれた。
風が吹く。
長い前髪が揺れて、その隙間からのぞく瞳がやけに熱っぽく見えた。
「白雪」
名前を呼ばれるだけで、胸がぎゅっとなる。
「それ、あんまり簡単に言うな」
「え……?」
朔夜は一歩、みうに近づく。
逃げる理由なんてないのに、みうはどきどきして後ろへ下がった。
けれど、すぐ背中が中庭の木に軽く触れる。
もう、下がれない。
朔夜はみうのすぐ目の前で足を止めた。
近い。
近すぎる。



