「俺、月華の幹部の一ノ瀬悠。よろしくね、お姫さま」
「お、お姫さま!?」
みうが目を丸くすると、今度は金髪の男の子が肩をすくめる。
「悠、それ初対面で言うと引かれるだろ」
彼は少し呆れた顔をしながらも、みうに向かって片手を上げた。
「相馬玲央。幹部。まあ、総長がここまで必死になる子だから、ちょっと気になってさ」
「ひ、必死……?」
その言葉に、みうはそっと朔夜を見る。
けれど朔夜は不機嫌そうに眉を寄せただけだった。
「玲央、おまえ余計なこと言うな」
さらに、その隣にいた黒髪の男の子が静かに口を開く。
「望月凪。幹部です。騒がせてすみません」
その人は一番落ち着いて見えた。
冷静そうで、でもみうを見る目はどこかやさしい。
「総長が朝から落ち着かなかったので、連れてきました」
「凪」
朔夜の声が少し低くなる。
けれど凪はまったく動じない。
「事実です」
教室の空気がさらにざわつく。
みうは恥ずかしくてたまらなくなり、鞄をぎゅっと抱きしめた。
「え、えっと……」
そんなみうの前まで、朔夜がゆっくり歩いてくる。
クラスメイトたちが道をあける中、朔夜はみうの机の前で足を止めた。
「放課後まで待つつもりだった」
「え……?」
「でも、おまえの顔見たくなった」
その瞬間、教室中が完全に固まった。
みうも、息をするのを忘れる。
朔夜は何でもないことみたいに言ったけれど、その破壊力はとんでもなかった。
「そ、そんなこと急に言わないで……!」
みうが涙目で訴えると、悠が楽しそうに吹き出した。
「うわ、総長が甘い」
「これレアだよ、みうちゃん」
玲央も笑いをこらえながら言う。
「昨日からずっとこんなん。連絡返ってくるたび顔ゆるんでたし」
「れ、玲央!」
今度こそ朔夜が本気で睨む。
けれど幹部たちはまるで慣れているみたいに平然としていた。
みうは耳まで真っ赤になりながら、小さくうつむく。
そんな自分を見て、朔夜はふっと表情をゆるめた。
「……泣くなよ」
「泣いてないもん……」
「じゃあ行くぞ」
「い、行くって、まだ授業……」
「昼休みだろ」
そう言って、朔夜はみうの鞄を自然に持つ。
あまりにも当たり前みたいなその仕草に、また胸がどきどきした。
「中庭だけ。すぐ返す」
低い声でそう言われたら、断れるわけがない。
みうがこくんと頷くと、朔夜は少しだけ満足そうに目を細めた。
そのまま教室を出ようとしたとき、悠がくすっと笑う。
「総長、ちゃんとエスコートしてあげて」
「うるせぇ」
「みうちゃん、総長って怖そうに見えるけど、君のことになるとほんと余裕ないから」
「ちょ、ちょっと悠くん……!」
みうが慌てる横で、凪が静かに続けた。
「何かあったら俺たちにも言ってください。総長ひとりだと、たぶん必死になりすぎるので」
玲央もにやっと笑う。
「まあ、つまり。あんたは今日から月華みんなで守るってこと」
その言葉に、みうは目をぱちぱちさせた。
昨日まで、自分には関係のない世界だと思っていた。
怖い人たちだと思っていた。
でも今はわかる。
この人たちは、朔夜の大事な仲間で。
そして、朔夜が大切にしたいと思ったものを、一緒に守ろうとしてくれている。
胸の奥が、じんわりあたたかくなった。
「……ありがとうございます」
みうが小さく頭を下げると、悠はにこっと笑い、玲央は照れくさそうにそっぽを向き、凪はやわらかく目を細めた。
そして朔夜は、みうの手首をそっと引く。
「行くぞ、みう」
名前を呼ばれた。
しかも、こんなに自然に。
みうの心臓がまた跳ねる。
「は、はい……!」
教室中の視線を浴びながら、みうは朔夜の隣を歩いた。
怖いはずの月華。
でも今は、その中心にいる彼の隣が、いちばん安心する場所になりはじめていた。
「お、お姫さま!?」
みうが目を丸くすると、今度は金髪の男の子が肩をすくめる。
「悠、それ初対面で言うと引かれるだろ」
彼は少し呆れた顔をしながらも、みうに向かって片手を上げた。
「相馬玲央。幹部。まあ、総長がここまで必死になる子だから、ちょっと気になってさ」
「ひ、必死……?」
その言葉に、みうはそっと朔夜を見る。
けれど朔夜は不機嫌そうに眉を寄せただけだった。
「玲央、おまえ余計なこと言うな」
さらに、その隣にいた黒髪の男の子が静かに口を開く。
「望月凪。幹部です。騒がせてすみません」
その人は一番落ち着いて見えた。
冷静そうで、でもみうを見る目はどこかやさしい。
「総長が朝から落ち着かなかったので、連れてきました」
「凪」
朔夜の声が少し低くなる。
けれど凪はまったく動じない。
「事実です」
教室の空気がさらにざわつく。
みうは恥ずかしくてたまらなくなり、鞄をぎゅっと抱きしめた。
「え、えっと……」
そんなみうの前まで、朔夜がゆっくり歩いてくる。
クラスメイトたちが道をあける中、朔夜はみうの机の前で足を止めた。
「放課後まで待つつもりだった」
「え……?」
「でも、おまえの顔見たくなった」
その瞬間、教室中が完全に固まった。
みうも、息をするのを忘れる。
朔夜は何でもないことみたいに言ったけれど、その破壊力はとんでもなかった。
「そ、そんなこと急に言わないで……!」
みうが涙目で訴えると、悠が楽しそうに吹き出した。
「うわ、総長が甘い」
「これレアだよ、みうちゃん」
玲央も笑いをこらえながら言う。
「昨日からずっとこんなん。連絡返ってくるたび顔ゆるんでたし」
「れ、玲央!」
今度こそ朔夜が本気で睨む。
けれど幹部たちはまるで慣れているみたいに平然としていた。
みうは耳まで真っ赤になりながら、小さくうつむく。
そんな自分を見て、朔夜はふっと表情をゆるめた。
「……泣くなよ」
「泣いてないもん……」
「じゃあ行くぞ」
「い、行くって、まだ授業……」
「昼休みだろ」
そう言って、朔夜はみうの鞄を自然に持つ。
あまりにも当たり前みたいなその仕草に、また胸がどきどきした。
「中庭だけ。すぐ返す」
低い声でそう言われたら、断れるわけがない。
みうがこくんと頷くと、朔夜は少しだけ満足そうに目を細めた。
そのまま教室を出ようとしたとき、悠がくすっと笑う。
「総長、ちゃんとエスコートしてあげて」
「うるせぇ」
「みうちゃん、総長って怖そうに見えるけど、君のことになるとほんと余裕ないから」
「ちょ、ちょっと悠くん……!」
みうが慌てる横で、凪が静かに続けた。
「何かあったら俺たちにも言ってください。総長ひとりだと、たぶん必死になりすぎるので」
玲央もにやっと笑う。
「まあ、つまり。あんたは今日から月華みんなで守るってこと」
その言葉に、みうは目をぱちぱちさせた。
昨日まで、自分には関係のない世界だと思っていた。
怖い人たちだと思っていた。
でも今はわかる。
この人たちは、朔夜の大事な仲間で。
そして、朔夜が大切にしたいと思ったものを、一緒に守ろうとしてくれている。
胸の奥が、じんわりあたたかくなった。
「……ありがとうございます」
みうが小さく頭を下げると、悠はにこっと笑い、玲央は照れくさそうにそっぽを向き、凪はやわらかく目を細めた。
そして朔夜は、みうの手首をそっと引く。
「行くぞ、みう」
名前を呼ばれた。
しかも、こんなに自然に。
みうの心臓がまた跳ねる。
「は、はい……!」
教室中の視線を浴びながら、みうは朔夜の隣を歩いた。
怖いはずの月華。
でも今は、その中心にいる彼の隣が、いちばん安心する場所になりはじめていた。



