流れ星に願いをこめて。

「でも、それ以上に」

 ひとつ息を吸う。

「会いたかった」

 言った瞬間、胸の奥に隠していた気持ちがほどける。
 恥ずかしい。
 でも、言えてよかったと思った。

 玲央くんは何も言わなかった。
 ただ、まっすぐにわたしを見ている。

 その視線に耐えきれなくなって、わたしは少しだけ目をそらした。

「……なに」

「いや」

「いや、じゃなくて」

「同じだと思って」

 低い声が、すぐ近くで落ちる。

 心臓が跳ねた。

「俺も、ずっと会いたかった」

 もうだめだと思った。
 そんなの、反則だ。

 放課後のやわらかい風が吹く。
 髪が頬にかかって、視界が少し揺れた。

 そのときだった。
 ふいに、玲央くんの指先がわたしの髪に触れる。

「……え」

「葉っぱ」

 見れば、髪に小さな葉がついていた。
 彼はそれを取っただけ。
 ただそれだけなのに、触れられた場所が熱い。

「紗月、顔赤い」

「玲央くんのせいなんだけど」

「俺?」

「そうだよ」

 少しむっとして言うと、玲央くんは珍しく、ほんの少しだけ笑った。

 その笑顔に、また心臓が苦しくなる。

「かわいい」

「……は?」

 聞き間違いかと思った。
 けれど玲央くんは、自分で言ってしまったことに気づいたのか、すぐに視線をそらす。

「今のなし」

「なしにできると思ってるの?」

「思ってない」

「じゃあ言わないでよ」

「無理だった」

 さらっと返されて、言葉を失う。

 無理だったってなに。
 そんなふうに言われたら、期待してしまう。

 好きだって。
 今もちゃんと、特別なんだって。

 でも、わたしばかり先に舞い上がるのは悔しい。

「玲央くん」

「なに」

「わたし、簡単じゃないから」

 まっすぐ言うと、彼は少しだけ驚いた顔をしたあと、静かにうなずいた。

「知ってる」

「ちゃんと向き合ってくれないと、許さない」

「ああ」

「途中でいなくなったりしたら、今度はほんとに怒るから」

 玲央くんは一瞬だけ目を細める。
 その表情はやさしくて、でもどこかまぶしそうだった。

「いなくならない」

 短いのに、強い声だった。

 その一言だけで、十分だった。

 信じてもいいのかもしれない。
 あの日の約束のつづきを。
 流れ星みたいに消えたと思っていた想いの、その先を。

「帰るか」

 玲央くんがそう言って、自然にわたしの鞄を持つ。

「え、ちょっと」

「重いだろ」

「自分で持てる」

「知ってる。でも持ちたい」

 不器用なくせに、そういうことだけはずるい。

 結局わたしは小さく頬をふくらませながら、彼の隣を歩き出した。
 でもたぶん、顔はちゃんと赤かったと思う。

 止まっていた時間は、少しずつ動き出している。
 今度こそ、見失わないように。
 離さないように。

 夕暮れに染まる帰り道で、わたしはそっと願った。

 この再会が、今度こそ一瞬で終わりませんように。