「ああ。悪い」
短くそう返して、わたしのほうへ来る。
女子たちは少し残念そうな顔をしたけれど、先生の名前を出されると止めづらいらしい。
わたしたちはそのまま教室を出た。
廊下に出た途端、玲央くんが小さく息をつく。
「……助かった」
「やっぱり困ってたんじゃん」
「少しだけ」
「少しじゃなさそうだったけど」
わたしが笑うと、玲央くんは肩をすくめた。
「紗月、こういうとこ昔から変わらないな」
「なにそれ」
「困ってるとき、すぐ気づく」
その言い方がやさしくて、胸がじんわり熱くなる。
わたしたちはそのまま校舎裏へ向かった。
部活の音が遠くに聞こえる場所で立ち止まると、さっきまでの軽い空気が少しずつ静かになっていく。
「それで」
先に口を開いたのは、わたしだった。
「話って?」
玲央くんは少しだけ視線を落とした。
何を言うか迷っている顔。
クールなのに、こういうときだけすごくわかりやすい。
「昨日、ちゃんと話せなかったから」
「うん」
「……あのとき、急にいなくなって悪かった」
その言葉に、胸がきゅっと縮む。
やっぱり。
玲央くんも、あのことをずっと気にしていたんだ。
「引っ越したんだ」
静かな声が続く。
「親の都合で、急に決まって。言おうとはしたけど、会えなかった」
わたしは黙って彼を見る。
「連絡先も知らなかったし、小学生だったし、どうすればいいかわからなかった」
不器用な玲央くんらしい。
でも、その言い訳みたいな言葉の裏に、ずっと抱えてきた後悔がにじんでいた。
「……そっか」
それしか言えなかった。
本当は、もっと早く会いに来てほしかった。
忘れないでいてほしかった。
ひとことでもよかったから、ちゃんとさよならを言ってほしかった。
でも、今の玲央くんの顔を見たら、責める気持ちは少しずつほどけていった。
「紗月は」
「え?」
「怒ってると思ってた」
「怒ってたよ」
はっきり言うと、玲央くんがわずかに目を伏せる。
「ずっと、なんでって思ってた。嫌いになったのかなとか、忘れられたのかなとか、いっぱい考えた」
声が少しだけ震えそうになる。
でも、ここでごまかしたくなかった。
短くそう返して、わたしのほうへ来る。
女子たちは少し残念そうな顔をしたけれど、先生の名前を出されると止めづらいらしい。
わたしたちはそのまま教室を出た。
廊下に出た途端、玲央くんが小さく息をつく。
「……助かった」
「やっぱり困ってたんじゃん」
「少しだけ」
「少しじゃなさそうだったけど」
わたしが笑うと、玲央くんは肩をすくめた。
「紗月、こういうとこ昔から変わらないな」
「なにそれ」
「困ってるとき、すぐ気づく」
その言い方がやさしくて、胸がじんわり熱くなる。
わたしたちはそのまま校舎裏へ向かった。
部活の音が遠くに聞こえる場所で立ち止まると、さっきまでの軽い空気が少しずつ静かになっていく。
「それで」
先に口を開いたのは、わたしだった。
「話って?」
玲央くんは少しだけ視線を落とした。
何を言うか迷っている顔。
クールなのに、こういうときだけすごくわかりやすい。
「昨日、ちゃんと話せなかったから」
「うん」
「……あのとき、急にいなくなって悪かった」
その言葉に、胸がきゅっと縮む。
やっぱり。
玲央くんも、あのことをずっと気にしていたんだ。
「引っ越したんだ」
静かな声が続く。
「親の都合で、急に決まって。言おうとはしたけど、会えなかった」
わたしは黙って彼を見る。
「連絡先も知らなかったし、小学生だったし、どうすればいいかわからなかった」
不器用な玲央くんらしい。
でも、その言い訳みたいな言葉の裏に、ずっと抱えてきた後悔がにじんでいた。
「……そっか」
それしか言えなかった。
本当は、もっと早く会いに来てほしかった。
忘れないでいてほしかった。
ひとことでもよかったから、ちゃんとさよならを言ってほしかった。
でも、今の玲央くんの顔を見たら、責める気持ちは少しずつほどけていった。
「紗月は」
「え?」
「怒ってると思ってた」
「怒ってたよ」
はっきり言うと、玲央くんがわずかに目を伏せる。
「ずっと、なんでって思ってた。嫌いになったのかなとか、忘れられたのかなとか、いっぱい考えた」
声が少しだけ震えそうになる。
でも、ここでごまかしたくなかった。



