総長の、夜よりもあぶない溺愛。

夜になって、ようやく部屋の中が静かになった。

昼の緊張が嘘みたいに、蓮の部屋には落ち着いた空気が流れている。
それでも紗月の胸は、ずっとそわそわしたままだった。

昼間、みんなの前で抱きしめられたこと。
たくさん褒められたこと。
そして、蓮に何度もまっすぐ見つめられたこと。

思い出すたびに、心臓が落ち着かない。

「紗月」

名前を呼ばれて顔を上げると、蓮がすぐそばに立っていた。

「はい……」

声が少し上ずる。
そんな紗月を見て、蓮は少しだけ目を細めた。

「まだ緊張してるな」

「だって……」

「昼のこと、思い出してたか」

図星だった。
紗月が黙ると、蓮は小さく息をついて、そっと頬に手を添える。

「今日のおまえ、ほんとによくやった」

やさしい声。
昼にも言われたのに、ふたりきりで聞くと破壊力が違う。

「……うれしかった」

「何が」

「蓮くんに、ちゃんと見てもらえてたの」

正直に言うと、蓮の目がわずかに揺れた。

「見てるに決まってんだろ」

低く返されて、胸が熱くなる。

「いつだっておまえのことばっか見てる」

その言葉に、紗月は息をのむ。

距離が近い。
視線も近い。
逃げたくないのに、どきどきしてどうしていいか分からない。

蓮は親指で紗月の頬をやさしくなでた。

「怖かったのに、ちゃんと立った」

「うん……」

「震えてたのに、声出した」

「……うん」

「偉い」

褒めるたびに、心の奥が甘くほどけていく。

紗月は恥ずかしくて目を伏せた。
すると蓮が少しだけかがんで、視線を合わせてくる。

「逃げるな」

「逃げてないもん……」

「じゃあ、こっち見ろ」

その言い方が甘い命令みたいで、紗月はおそるおそる蓮を見る。

次の瞬間、蓮の腕が紗月の腰に回った。

「きゃ……」

ふわっと体が揺れる。
後ろへ下がった紗月の足がベッドの端に触れ、そのままバランスを崩した。

ぽす、とやわらかい感触。

気づけば、紗月はベッドに座る形になっていた。
蓮はすぐ目の前にいる。

「れ、蓮くん……」

名前を呼ぶ声が震える。

蓮はその反応を見て、一度だけ動きを止めた。

「嫌か」

低い声。
でもちゃんと待ってくれているのが分かる。

紗月はどきどきしながら、首を小さく振った。

「……嫌じゃない」

その返事を聞いた蓮の目が、少しだけ熱を帯びる。