総長の、夜よりもあぶない溺愛。

幹部たちの言葉が続くたびに、蓮の腕の力が少しずつ強くなっていく。

紗月がそっと見上げると、蓮は明らかに不機嫌そうだった。

「蓮くん……?」

「褒めるのはいい」

低い声。

「でも、惚れただの好きだの軽々しく言うな」

そのまま蓮は、紗月の肩を抱いたまま幹部たちを睨む。

白石が吹き出す。

「独占欲えぐ」

「総長、顔こわいよ」

相沢も笑っている。

神崎は小さくため息をついた。

「分かりやすすぎます」

桐生は短く言った。

「本気だ」

蓮は舌打ちすると、紗月のほうへ視線を戻した。
さっきまでの鋭さが嘘みたいに、その目はやわらかい。

「おまえはどうなんだ」

「え……?」

急に聞かれて、紗月はきょとんとする。

「今ので」 蓮は少しだけ眉を寄せた。

「怖くなったか。隣にいるの、やめたくなったか」

その問いに、紗月ははっとする。

蓮は不安だったのだ。
自分のせいでまた危ない目に遭わせて、やっぱり離れたいと思われるのが。

紗月はすぐに首を振った。

「ならないよ」

「……」

「怖いのは怖い。でも」

紗月はまっすぐ蓮を見る。

「もっと、隣にいたいって思った」

その瞬間、蓮の目が揺れる。

相沢が小さく息をのみ、白石が口笛を吹きそうな顔をして、神崎は目を伏せて苦笑した。
桐生だけが静かに頷く。

蓮は数秒黙ったあと、深く息をつく。

「……反則」

「え?」

「そんなこと言われたら、もう離せねぇだろ」

低くつぶやくと、蓮はもう一度紗月を胸の中へ引き寄せた。

今度はさっきよりも、ずっとやさしく。
でも確かに、誰にも渡さないという独占が混じっていた。

「今日の紗月、ほんとにかっこよかった」

相沢がしみじみ言う。

「可愛いだけじゃないの強い」

白石も頷く。

神崎は静かにまとめる。

「ますます大切にしたくなりましたね」

桐生は短く落とした。

「好きになる」

そのひと言に、蓮がぴくっと反応する。

「桐生」

「事実」

即答だった。

紗月はもう恥ずかしさでどうにかなりそうなのに、胸の奥は信じられないくらいあたたかかった。

認められて。
惹かれて。
そして誰よりも強く、蓮に求められている。

危険な町の中で始まった恋は、守るだけのものじゃなくなっていた。
紗月自身の強さが、みんなの心を動かし始めていた。