総長の、夜よりもあぶない溺愛。

相手の動きが完全に止まったあと、張りつめていた空気がようやく少しだけゆるんだ。

神崎は周囲を確認し、桐生は最後まで警戒を解かない。
白石はまだ不機嫌そうに舌打ちしているし、相沢は肩の力を抜きながらも目だけは鋭い。

そんな中で、蓮だけがまっすぐ紗月のほうへ向かってきた。

「紗月」

名前を呼ばれた瞬間、今まで抑えていた緊張が一気に込み上げる。

「れ、蓮くん……」

大丈夫だった。
ちゃんと無事だった。
そう思った途端、足の力が少し抜ける。

その瞬間、蓮の腕が紗月を強く引き寄せた。

「きゃ……っ」

ふわっと視界が揺れて、次の瞬間には蓮の胸の中だった。

しっかりと、逃がさないみたいに抱きしめられる。

「よくやった」

耳元で落ちた声が、ひどく甘い。

「……っ」

「ちゃんと見て、ちゃんと声出した」

背中に回る腕があたたかい。
強いのに、やさしい。
それだけで、張っていた気持ちが全部ほどけそうになる。

「すごかった」

低く、まっすぐな声。
こんなふうに褒められるなんて思っていなかった。

紗月は蓮の服をそっとつかむ。 「ほんとに……?」

「ああ」

即答だった。

「おまえがいたから、助かった」

そのひと言で、胸がいっぱいになる。
守られるだけじゃなかった。ちゃんと隣で役に立てた。その実感が、じんわり熱になって広がる。

蓮は少しだけ体を離すと、紗月の顔をのぞきこんだ。

「怖かったか」

やさしい声。
紗月は少し迷ってから、正直にうなずく。

「……うん。すごく」

「それでも動いた」

蓮の指先が、そっと頬にふれる。

「偉い」

たった二文字なのに、涙が出そうになるくらいうれしい。