独占愛は夜より深く。

全部が片づいた頃には、空がうっすら明るくなっていた。

迎賓館の外。
海風が静かに吹く。
事件は終わった。
兄の真実も明らかになった。
苦しかった夜が、やっと朝に変わっていく。

みんなが少し離れたところで動く中、要が私の前に立つ。

「紗菜」

呼ばれて顔を上げる。

今までずっと張っていた糸が切れたみたいに、胸がいっぱいだった。
兄のこと。
真相のこと。
終わった安心。
そして、目の前の人への気持ち。

全部ちゃんと伝えたい。

「約束」

要が低く言う。

「返事の続き」

そうだった。
何度も先送りにしてきた、その続き。

私は少しだけ笑って、でもまっすぐ要を見た。

「好き」

声は震えていた。
でも、ちゃんと届くように言う。

「最初は怖かったし、近すぎてずるいし、ほんとに困ることばっかりだった」

要の目が少しだけやわらぐ。

「でも、いつも守ってくれて、私の怖いも見抜いてくれて、一緒に背負ってくれて……」

息を吸う。
最後まで言う。

「もう、要じゃなきゃだめ」

言い切った瞬間、胸がどきどきして苦しいくらいだった。

要はしばらく何も言わなかった。
ただ、まっすぐ私を見つめている。

やがて一歩近づくと、そっと頬に触れた。

「知ってた」

「え」

「でも、おまえの口から聞きたかった」

ずるい。
最後までほんとにずるい。

「俺も好きだ」

低い声。
でも今まででいちばんやわらかかった。

「最初から手放す気なんてなかった」

心臓が跳ねる。

「これからも離さない」

その言葉のあと、要の指が私の顎をそっと上げた。
逃げる理由なんて、もうどこにもない。

朝の光が少しずつ広がる中で、要の唇がやさしく重なる。

今までみたいな不意打ちじゃない。
確かめ合うみたいな、ちゃんとしたキスだった。

甘くて、あたたかくて、少しだけ泣きそうになる。

離れたあとも、要の額が私に触れたままだった。

「やっと言えた」

私が小さくつぶやくと、要がほんの少し笑う。

「遅い」

「そっちも」

「でも待ったかいあった」

そう言って、もう一度私を抱き寄せる。
今度は守るためだけじゃない。
大切にしたいと伝えるための抱きしめ方だった。

私はその胸に顔を埋める。
夜は終わった。
兄の想いも、ちゃんと受け取れた。
悲しみは消えないけれど、それでも前を向ける。

要となら。
この先もきっと。