独占愛は夜より深く。

車が安全圏へ入ったあと、伊織がすぐに鍵を確認した。

古い真鍮色の鍵。
持ち手に、小さく数字が刻まれている。

「三二七」

伊織が読み上げる。

「部屋番号みたい」
碧が言う。

恒一がすぐに反応する。

「それなら貸金庫か、ロッカーか」

私はふと、兄の手紙の最後の余白を思い出した。

「待って」

みんながこちらを見る。

「手紙の裏、見てない」

要が封筒から便箋を取り出し、裏返す。
そこには小さく、急いで書いたみたいな文字があった。

みなと中央駅 東口

車内が静まり返る。

「駅のロッカーだな」
恒一が低く言う。

「三二七番と一致します」
伊織もうなずく。

兄は家にUSBと手紙を隠し、さらに別の場所にも何かを残していた。
真相は、まだその先にある。

要が便箋をたたみながら言う。

「次は駅だ」

その横顔はもう決まっていた。

私も、胸の奥で何かが定まるのを感じる。
怖い。
でも行く。
兄の残した全部を、最後まで受け取るために。

要が私を見る。

「まだ行けるか」

私は今度こそ、迷わず答えた。

「行ける」

「よし」

そのひと言と一緒に、要の指が私の手をもう一度強く握る。

朝が少しずつ近づいている。
夜の終わり。
でもきっと本当の意味で夜が明けるのは、これから先だ。