独占愛は夜より深く。

東條玲央の名が出てから、部屋の空気はさらに重くなった。

高層ホテル。
表向きは華やかで整った場所。
でも、こういう場所ほど人は裏を隠しやすい。
兄が命をかけて残そうとした真実が、そんな場所でまた動こうとしている。

「時間は明日の夜」

伊織が画面を切り替えながら言う。

「東條は二十時過ぎにホテルへ入り、最上階ラウンジ付近で蓮司側と接触する可能性が高いです」

「表の出入口は監視が多い」
恒一が低く言う。
「正面から入っても怪しまれない形が要るな」

碧が笑う。

「つまり、変装ってことだね」

その言葉に、私は思わず要を見る。
要は腕を組んだまま、無言で地図を見ていた。

「紗菜は一般客に紛れる」
やがて要が言う。
「俺と一緒に入る」

心臓が少し跳ねる。
一緒に。
ただの作戦だとわかっているのに、その響きだけで妙に意識してしまう。

「恋人連れが自然ですね」
伊織が淡々と補足した。

その瞬間、部屋が少しだけ静かになった。

碧が真っ先に口元を押さえる。

「へえ」

恒一は呆れたように目を伏せた。
私は一気に顔が熱くなる。

「こ、恋人って」

「嫌か」

すぐ隣から落ちた低い声に、余計に鼓動が速くなる。
嫌なわけない。
でも今ここでそう言えるほど余裕はなかった。

「嫌じゃ……ないけど」

声が小さくなる。
それだけで、要の目がほんの少しだけやわらいだ。

「じゃあ決まりだ」

平然とまとめられて、ますます悔しい。
でもその横顔がどこかうれしそうで、何も言い返せなくなる。