独占愛は夜より深く。

警報音が、地下の空気を切り裂いた。

さっきまで感情でいっぱいだった胸が、今度は別の意味で強く鳴る。
現実に引き戻される。
ここは泣いて立ち止まれる場所じゃない。

「行くぞ」

要の声は低く、はっきりしていた。
その手が私の手を包む。
強いのに、引きずるみたいな乱暴さはない。
ちゃんと私がついていける速さを知っている手だった。

伊織が帳簿と記録媒体を抱え、恒一が前を、碧が後ろを警戒する。
月影の四人は何も言わなくても動きがそろっていた。

地下の廊下を走る。
古い床が小さく軋み、警報音がどこまでも追いかけてくる。
冷たい空気の中で、要の手の熱だけがやけにはっきりしていた。

「要……っ」

「息、合わせろ」

振り向かないまま落ちた声に、私は必死でうなずく。
苦しい。
でも離されたくない。
そんなことを思っている自分に、また胸が痛くなる。

階段へ差しかかったところで、恒一が足を止めた。

「上、気配ある」

短いひと言で全員の空気が変わる。

要はすぐに私を背中側へ引き寄せた。
その動きがあまりにも自然で、守られる側だと嫌でも思い知らされる。

碧が小さく笑う。

「正面はだめだね。裏の搬出口使おう」

「こっちです」

伊織が別の通路を示す。
迷いのない声。
さっきまで帳簿を見ていた人とは思えないくらい、落ち着いている。

狭い通路へ折れると、灯りはさらに少なくなった。