独占愛は夜より深く。

碧が離れていったあとも、倉庫の空気はまだ少し熱を残していた。

要の指先が頬に触れたまま、私は息をするのも忘れそうになる。
こんな近さ、だめだ。
心臓の音まで聞かれそうで、落ち着かない。

「顔、赤い」

低い声でそう言われて、余計に熱くなる。

「……要のせいでしょ」

「俺のせいなら、そのままでいて」

ずるい。
そんなふうに平然と言えるのが、本当にずるい。

逃げるように視線をそらそうとしたのに、要の指がそっと顎に触れて、また正面を向かされる。

「そらすな」

「無理……近い」

「近くしてる」

即答だった。
恥ずかしくてたまらないのに、要は少しもためらわない。

そのまま私の額に、自分の額をこつんと重ねる。
体温が近すぎて、胸の奥までじんわり熱くなった。

「碧に触られて、嫌だった」

ぽつりと落ちた声は、さっきよりもずっとやわらかい。
怒っているというより、拗ねているみたいだった。

「髪、直しただけだよ」

「それでも嫌だ」

「子どもみたい」

そう言うと、要は少しだけ目を細めた。

「おまえのことになると、たぶんそうなる」

その言葉が甘すぎて、胸がきゅっと苦しくなる。

要は普段、こんなふうに気持ちを見せる人じゃない。
冷たくて、静かで、何を考えているかわからない。
なのに今は、私にだけ全部隠さない。