独占愛は夜より深く。

雨の匂いが残る深夜の校門前。
街灯の下で立ち止まった私の視線の先に、黒い影があった。

「遅い」

低くて、冷たい声。
それだけで誰かわかる。

月城 要。

この街で知らない人はいない。
暴走族 月影 の総長。
月のない夜みたいに静かで、触れたら終わりだと噂される男。

黒いパーカーのポケットに手を入れたまま、要はまっすぐ私を見る。
何も言わないのに、その目だけで逃げられないと思わされる。

「……なんでいるの」

「迎え」

「頼んでない」

「でも来た」

それだけ言って、要は私の手から鞄を取った。
強引なのに、扱いは妙に丁寧で、余計に腹が立つ。

「返して」

「嫌だ」

「は?」

「おまえを一人で帰す気もない」

いつもそうだ。
要は私の気持ちなんて確認しない。
勝手に現れて、勝手に守って、勝手に心を乱していく。

校門を出た瞬間、遠くでバイクの音が響いた。
月影のメンバーだろう。
黒い車体に銀のライン。
夜の街に溶けるようなその集団は、まるで要そのものみたいだった。

「最近、変なのにつけられてる」

歩きながら、要が何でもないことみたいに言った。

「……え」

「三日前も昨日も今日も。気づいてないのはおまえだけ」

背中がひやりとする。
思い返せば、視線を感じた気はした。
でも、気のせいだと思っていた。