結局、件のヴァイオレットダイアモンドは指輪でなくピアスに加工される事となった。
「私の知る限り、バルトさんは然るべき相手(ヒロイン)と巡り合うことになっているので結婚は出来ません」
さすがに婚約指輪まで提案されると、バルトやエギルの発した”式の相談”や”伴侶”という怪しげな言葉を放置するわけにいかなかったのだ。
意外にも反論はなくバルトは頷いたので指輪の件が本気だったかは怪しいが、”聖女”という概念に対する態度がどうにも宗教染みているのは間違いないのでどのみちこれで良かったのだろう。
それに、考えてみれば隠しておく理由もない気がした。
元々バルトはメタな話がある程度通じるキャラクター。幼馴染の転生者であるミレーヌ耐性というべきか……そもそも話を結末に導くために呼ばれたという理由も鑑みれば、多少ネタバレしたところで未完結の物語なら悪い影響は出ないだろう。
むしろ紗希を聖女と思い込んでいる方が厄介なのだから。
「聖女様が知ってる物語と俺の知る物語は違うのか……分かりました」
そう言ったバルトの顔はどこか寂しげだったが、紗希の髪を柔らかな手つきで梳くとそっと耳に掛け「今は我慢します」と最終的に引き下がった。
ピアスはそういった流れもあって落とし所としてバルトの希望で選ばれている。
「お守りの意味合いなら、気兼ねなく受け取ってくれますよね。なんせこの世界は物騒ですから」
そんな風に熱心な瞳で言われれば、あまり無下に拒否することも出来なかった。
見通しの立たない世界で希望をちらつかせたことは、バルトを心許ない気分にはさせてしまったかもしれない。
せめて本当のヒロインであるセレスティーナと早く会わせるべきだろう。
鉱石は手先の器用な魔物に研磨させるためエギルの従魔に届けさせることとなった。
そのあと客人用と紹介された寝室に促され、その部屋で紗希はひとり食事をとることとなったのだが……通された部屋には出入り口とは別に、鍵のない扉があった。
「これって……――そんなわけないか」
念のため、誰も居なくなったあと違和感のあった扉を開いてみると、通路を挟んで仰々しい天幕付きの寝台がある部屋に繋がっていた。
――こういう通路で繋がった部屋は夫婦が使うものでは?
静かに閉じて何も見なかったことにした。この世界ではもしかすると違うのかもしれない。などと紗希は一人考えを巡らせていたものの……他の理由を考えてみるも、紗希が居る部屋は護衛の控室というには広すぎて、調度品も鏡の置かれた化粧台も違和感でしかない。
「やっぱりおかしい」
紗希はいよいよ自分の発言がバルトに伝わっているか自信がなくなったのだった。
いろいろありすぎて混乱してきた紗希は、寝台に身体を投げ打ち全て明日考えることにした。
疲れている時に考えると大抵ろくでもない事しか思いつかないのだから。
バルトのことも、紗希を聖女と断言する根拠も、セレスティーナのことも、とりあえず後でいい。身体を横にするとどっと疲れが襲ってきて、泥のような眠りについたのだった。
「私の知る限り、バルトさんは然るべき相手(ヒロイン)と巡り合うことになっているので結婚は出来ません」
さすがに婚約指輪まで提案されると、バルトやエギルの発した”式の相談”や”伴侶”という怪しげな言葉を放置するわけにいかなかったのだ。
意外にも反論はなくバルトは頷いたので指輪の件が本気だったかは怪しいが、”聖女”という概念に対する態度がどうにも宗教染みているのは間違いないのでどのみちこれで良かったのだろう。
それに、考えてみれば隠しておく理由もない気がした。
元々バルトはメタな話がある程度通じるキャラクター。幼馴染の転生者であるミレーヌ耐性というべきか……そもそも話を結末に導くために呼ばれたという理由も鑑みれば、多少ネタバレしたところで未完結の物語なら悪い影響は出ないだろう。
むしろ紗希を聖女と思い込んでいる方が厄介なのだから。
「聖女様が知ってる物語と俺の知る物語は違うのか……分かりました」
そう言ったバルトの顔はどこか寂しげだったが、紗希の髪を柔らかな手つきで梳くとそっと耳に掛け「今は我慢します」と最終的に引き下がった。
ピアスはそういった流れもあって落とし所としてバルトの希望で選ばれている。
「お守りの意味合いなら、気兼ねなく受け取ってくれますよね。なんせこの世界は物騒ですから」
そんな風に熱心な瞳で言われれば、あまり無下に拒否することも出来なかった。
見通しの立たない世界で希望をちらつかせたことは、バルトを心許ない気分にはさせてしまったかもしれない。
せめて本当のヒロインであるセレスティーナと早く会わせるべきだろう。
鉱石は手先の器用な魔物に研磨させるためエギルの従魔に届けさせることとなった。
そのあと客人用と紹介された寝室に促され、その部屋で紗希はひとり食事をとることとなったのだが……通された部屋には出入り口とは別に、鍵のない扉があった。
「これって……――そんなわけないか」
念のため、誰も居なくなったあと違和感のあった扉を開いてみると、通路を挟んで仰々しい天幕付きの寝台がある部屋に繋がっていた。
――こういう通路で繋がった部屋は夫婦が使うものでは?
静かに閉じて何も見なかったことにした。この世界ではもしかすると違うのかもしれない。などと紗希は一人考えを巡らせていたものの……他の理由を考えてみるも、紗希が居る部屋は護衛の控室というには広すぎて、調度品も鏡の置かれた化粧台も違和感でしかない。
「やっぱりおかしい」
紗希はいよいよ自分の発言がバルトに伝わっているか自信がなくなったのだった。
いろいろありすぎて混乱してきた紗希は、寝台に身体を投げ打ち全て明日考えることにした。
疲れている時に考えると大抵ろくでもない事しか思いつかないのだから。
バルトのことも、紗希を聖女と断言する根拠も、セレスティーナのことも、とりあえず後でいい。身体を横にするとどっと疲れが襲ってきて、泥のような眠りについたのだった。



