エタってしまった小説の世界で、ヤンデレ化した勇者が離してくれません。~聖女と呼ばれ執愛されていますが……読者です!~

前魔王レギオス。
作中では魔王としか描写されず名前は出てこなかったキャラクターだ。

バルトが瀕死に至るまでに追い込み、最後は花雫の乙女が浄化したはずだが、彼女の口振りではどうもニュアンスが異なる。

「そうだったんですね……。ちなみにレギオス様は花雫の乙女に浄化されたんじゃなく、バルトさんに倒されのですか?」

「えぇ、そうです。あんな小娘如きがレギオス様を浄化など絶対にあり得ません」

「絶対に……」

「はい。人族が何度も討伐隊を寄越し小蠅のように煩わしかったので、浄化されたように見せかけただけです。実際は生きておりましたし、本当ならただの余興となるはずでした」

そう語るエギルは淡々とした中に侮蔑を孕む空気が醸し出されていた。

「騙して追い払ったら終わり、しかしバルトレッド様がひとり城に残ったことで状況が変わったのです。バルトレッド様の命を奪うことは造作もないことのはずでしたが、彼の方はしぶとく、力をつけ、ついに我々に牙を剥いたのです」

紗希は最新話までの流れを思い返す。

実際は浄化成功という見せかけを信じて討伐隊は凱旋する予定だったということか。時系列を整理すると、エギルの話が本当なら文字数的には辻褄が合う。

作者の傾向からしても、一巻は十万時前後で作られることが多い。

凱旋時点で既に十万字を超えていたことを考えると、セレスティーナを連れ出す冒頭までで一巻分。

つまりあのWEB小説はまだまだ続く。
折り返しを迎える前に更新が止まってしまったのだ。

となるとイベントがそれなりに必要だ……アデル王国に啖呵を切ってバルトがセレスティーナを連れ去る移動先が必要になる。

「セレスティーナの溺愛は魔王城で始まる予定だったとか……」

「聖女様?」

思わず口にしていた言葉に反応したエギルに、紗希は慌てて首を振った。

「な、なんでもないです」

と言ったものの、紗希の脳内は忙しなかった。

まずバルトが魔王城で足止めを喰らっていること自体が違和感だったわけで。

その現象の答えを、バルトがセレスティーナを連れ去る先は魔王城だったとすれば合点がいく。

小説が仮にそう動く予定だったとすれば、エタっているため、その過程を埋めきれず結果の整合性を取るため城に閉じ込められた。

もしくは止まらせておきたいという物語の抑止力か。

「ちなみにレギオス様はどんな方だったのですか?」

「肖像画がありますが、ご覧になりますか?」

「はい。ぜひ」