エタってしまった小説の世界で、ヤンデレ化した勇者が離してくれません。~聖女と呼ばれ執愛されていますが……読者です!~

――――エギルはバルトが立ち去るまで頭を下げていた。

そして衣裳部屋に紗希と二人きりになってようやく顔を上げた。
彼女の瞳は、その深紅の髪と同じで燃えるような美しい色をしている。

「エギルさん、私は紗希と申します。どうぞよろしくお願いします」

「偉大なる聖女様、敬語は不要です。それから私のことはエギルとお呼びください。これから採寸させていただきますので、私の従魔がお身体に触れますがお許しください」

「分かりました」

淡々として告げられてしまい、小さく頷くとエギルは従魔と呼んだ女性達に指示を出す。

採寸など下着を買う時以外、滅多なことではしないため僅かに肩が上がったが、緊張する間もなく一瞬にして終わってしまった。

「魔王様の心を揺さぶるドレスに仕上げます。デザインは私めにお任せください」

サイズが書かれているであろう羊皮紙のような紙を改めたエギルは、声のトーンに似合わず気合の入った言葉を紡ぐ。

無機質な声に熱が潜んでいる。いや、声というよりも瞳が物語っていたのかもしれない。
赤い瞳が自信たっぷりで紗希を見つめていたのだ。

「お手数おかけします……」

思わず頷いたものの、しかし猛烈な速さで仕上げられたドレスは、なかなかに露出度の高い破廉恥なものだった。

「あの、これはわりと大胆な感じですね……」

手に取った時、あまりの薄さとスケスケ感に紗希はぎょっとして息を呑み込んだ。

まさか嫌がらせなのかとすら感じるほどの露出ぶりに戸惑ったのだ。

しかし差し出したエギルの瞳は僅かに輝いている。

「聖女様にこそ相応しい一品です」

そして一呼吸置くとエギルはドレスについての説明を始めた。

「豊満な胸は布地であえて包み込んで隠し、胸元でのみ聖女様の渓谷の深さを感じさせております。腹部は透け感のある素材で奥ゆかしさを演出し、セイレーンを模したマーメイドラインの襞はおみ足が目立つようにざっくりと数カ所に切れ目を入れました。魔王様も必ずや満足されるでしょう」

ひと言でまとめてしまえば黒地のスケベドレス。

バルトに言い含められているうえ、あまりに熱心な説明を受けたので他意はないのだろう。きっと一生懸命考えてくれた結果出来上がったものなのだ。

そう思って一応腕を通してみたものの、仮にハロウィンだとしても身に着ける勇気ある猛者がいるかはかなり怪しいデザインだった。