そもそも魔王討伐隊というのはミレーヌのために王命で結成されたもので、加護の力で魔王を滅するために彼女を護衛するのがバルト達の役目。
そのメンバーは、バルトを除いて三人ともミレーヌに骨抜き状態だった。なんなら身体の関係もあった。
そんな爛れた関係の中に放り込まれているバルトはどんな気持ちだったのだろう。
ミレーヌを毛嫌いしているため他の仲間との間に溝もあったので、もしかするとバルトが閉じ込められた時に一悶着あったのかもしれない。
情報収集のためと思って聞いたことだったが、嫌なことを思い出させてしまったようだ。
「――それより、まずはドレスに着替えましょう。聖女様」
さっきまでの冷たい顔を霧散させ、バルトは上機嫌で紗希の肩を抱くと誘導するように歩き出した。
「着替え?」
その道すがら空き手でさりげなく空のコップに触れては消滅させる様は、バーで女性を口説くことに慣れた男さながらの手つき。
いや、詐欺に勧誘する人間の手際の良さというべきか、流されるように部屋を移動する。
辿り着いたのは大きな鏡のある衣装部屋のようだった。
「そのお召物は聖女様が帰る時に必要でしょう。直ぐのことにはならないし、こちらで預かりますよ。なので代わりのドレスに着替えましょう」
直ぐには帰さないと言われているようにも聞こえるが、さっきまで吐きそうだったのであまり深く考えないことにした。
いちいち反応していては身が持たない。
バルトに導かれ鏡の前に立つと、改めてその完璧なまでの造形美に内心一歩引いた。
並ぶと顕著に分かる。バルトの華やかさは段違いだ。隣に居ると特に、紗希の顔のパーツは基本的に小さいので、つんと尖った唇も二重の猫目も細い鼻筋も整っていようが存在が薄く見える。
「今のお姿も素敵ですが、俺にドレスを贈らせてください」
バルトは肩で跳ねる紗希のワンレングスの黒髪を少しばかり束ねて取ると、恭しく口付け、返事を待たずして鋭い声で誰かを呼びつけた。
「エギル。ここへ来い」
「はい、魔王様」
数秒もおかずして紗希達の背後に、一角獣のような角を生やした深紅の髪の女性が跪いていた。
彼女の背にも、あの時の少年のような羽が生えている。ただしこちらの女性は褐色の肌で尻尾がついており、その先端が赤く燃えていた。
というか今、バルトを魔王と呼んでいなかっただろうか。聞き間違いだと嬉しい。
そのメンバーは、バルトを除いて三人ともミレーヌに骨抜き状態だった。なんなら身体の関係もあった。
そんな爛れた関係の中に放り込まれているバルトはどんな気持ちだったのだろう。
ミレーヌを毛嫌いしているため他の仲間との間に溝もあったので、もしかするとバルトが閉じ込められた時に一悶着あったのかもしれない。
情報収集のためと思って聞いたことだったが、嫌なことを思い出させてしまったようだ。
「――それより、まずはドレスに着替えましょう。聖女様」
さっきまでの冷たい顔を霧散させ、バルトは上機嫌で紗希の肩を抱くと誘導するように歩き出した。
「着替え?」
その道すがら空き手でさりげなく空のコップに触れては消滅させる様は、バーで女性を口説くことに慣れた男さながらの手つき。
いや、詐欺に勧誘する人間の手際の良さというべきか、流されるように部屋を移動する。
辿り着いたのは大きな鏡のある衣装部屋のようだった。
「そのお召物は聖女様が帰る時に必要でしょう。直ぐのことにはならないし、こちらで預かりますよ。なので代わりのドレスに着替えましょう」
直ぐには帰さないと言われているようにも聞こえるが、さっきまで吐きそうだったのであまり深く考えないことにした。
いちいち反応していては身が持たない。
バルトに導かれ鏡の前に立つと、改めてその完璧なまでの造形美に内心一歩引いた。
並ぶと顕著に分かる。バルトの華やかさは段違いだ。隣に居ると特に、紗希の顔のパーツは基本的に小さいので、つんと尖った唇も二重の猫目も細い鼻筋も整っていようが存在が薄く見える。
「今のお姿も素敵ですが、俺にドレスを贈らせてください」
バルトは肩で跳ねる紗希のワンレングスの黒髪を少しばかり束ねて取ると、恭しく口付け、返事を待たずして鋭い声で誰かを呼びつけた。
「エギル。ここへ来い」
「はい、魔王様」
数秒もおかずして紗希達の背後に、一角獣のような角を生やした深紅の髪の女性が跪いていた。
彼女の背にも、あの時の少年のような羽が生えている。ただしこちらの女性は褐色の肌で尻尾がついており、その先端が赤く燃えていた。
というか今、バルトを魔王と呼んでいなかっただろうか。聞き間違いだと嬉しい。



