「今日は、よく眠ってますね」
そういえば、昨日は遅くまで撮影があったと、先輩自身が言っていた気がする。
きっと、相当疲れが溜まっているんだろう。
できることなら、このままそっと寝かせておいてあげたい。
でも、私にも次の授業がある。
「ちょっと、起きてせんぱ……きゃっ!」
突然、手首を強い力で掴まれたかと思うと、一気に視界が傾いた。
ドサッと柔らかいマットレスの上に倒れ込み、気付いたときには先輩の腕の中にすっぽり収まっていた。
寝ているはずなのに振り払えないくらいの強い力で、ぐっと抱き寄せられる。
「せ、先輩、はなして……」
「んー、ダメ。離れないで……」
先輩が、私を正面からぎゅっと抱きしめてくる。
先輩、寝ているはずなのに、物凄い力だ。
彼の体温が伝わってきて、心臓が破裂しそうなくらいバクバクする。
まずい。こんなところ、誰かに見られたらどうしよう。
そう思うのに、このまま先輩の腕の中にいたいと思ってしまう、自分もいる。
恐怖と、うしろめたいくらいの安心感が、ぐちゃぐちゃに絡み合って、頭の中がうまく整理できない。
だけど、高校生の男女がひとつのベッドで寝ている。
これって、かなりまずいんじゃ……?
誰かに見られる前に、早くここから離れなきゃ。



