保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


アイスを食べ終える頃には、辺りもすっかり夕暮れの色に染まっていた。

「そろそろ行くか」

先輩がベンチから立ち上がり、私たちは公園を出て、また人通りのある道へと戻る。

さっきまでの、あの甘くて特別な時間が嘘だったみたいに、街の空気が急によそよそしく感じられた。

「少し離れて歩こうか。あんまり近づきすぎると、それはそれで目立つし」

そう言って、須藤先輩は私から少し距離を置いて歩き始める。

先輩は人気モデルだから、仕方ないって分かっているけれど。

いつもの、肩がぶつかるくらいの距離とは違う、この不自然な間隔が、なんだか今日は妙に寂しく感じられた。

さっきまで隣にいた温もりが遠くなっただけで、こんなにも心細くなるなんて。

「なぁ、咲奈ちゃん」

しばらく無言で歩いたあと、先に口を開いたのは須藤先輩だった。

「前から聞こうと思ってたんだけど。俺のこと、噂で聞いたことあるでしょ」

さっきの、聞きたいことがあるという話は、これのことだったんだ。

「噂、ですか?」

「女の子を取っかえ引っ替えしてる、みたいなやつ」

喉の奥が、急に渇いた。

田村先輩たちに言われたことや、梨沙子から聞いた噂が、頭の中を一気に駆け巡る。

「……はい、聞いたことあります」

正直に答えると、須藤先輩は少し困ったような顔をした。

「それ、どこまで本当だと思う?」

どこまでって、言われても……。