制服の第一ボタンを少し緩め、黒縁メガネの奥からこちらを覗き込む姿は、いつもの華やかなモデルの先輩とはどこか違って見える。
どこか知的でラフな雰囲気に、なんだか少しどきりとした。
「お待たせ、咲奈ちゃん」
「……先輩、ちゃんと変装してるんですね」
「そりゃそうだよ。校門の前であんな騒ぎになった直後に、咲奈ちゃんと一緒にいるとこなんて見られたら、面倒なことになるだろ」
先輩の言葉に、なるほどと思う。
私が知らないだけで、先輩はいつも、こういう気遣いを重ねているんだろう。
「それより、咲奈ちゃん。試験もお互い終わったことだし、ちょっとお疲れ様会でもしない?」
「お疲れ様会、ですか?」
「そう。ほら、あそこのアイス」
コンビニの入り口近くにある、アイスの幟を指さす先輩。
「俺が奢るからさ、好きなの選んでいいよ」
「……いいんですか?」
「いいよ、いいよ。俺も食べたい気分だったし」
そう言って店内へ向かう先輩の背中を、慌てて追いかける。
黒縁メガネに制服姿の先輩と、放課後の街を並んで歩いて、アイスを選ぶ。
……これって、なんだか秘密の制服デートみたいだ。
そんなことが頭をよぎって、急に頬のあたりがじわりと熱を持つ。
私は迷った末に定番のバニラアイスを、先輩はチョコレート味のアイスバーを手に取った。
会計を済ませ、店の裏手にある小さな児童公園のベンチに、私たちは並んで腰を下ろす。人通りの少ない、静かな場所だ。



