放課後。校門のあたりが妙に騒がしいことに気づいたのは、下駄箱を出てすぐのことだった。
「須藤くん、テスト終わったからこれから一緒にどこか行かない?」
「みんなで打ち上げしようよ、海里くーん!」
いつものクラスの垣根を越えたファンの子たちが、校門のあたりに集まって須藤先輩を取り囲んでいた。
私も、帰る方向がそちらしかないので、自然とその人だかりに紛れる形になる。
「ごめんごめん、今日はさすがに疲れたからパス。また今度な」
軽く手を振っていなしながらも、なかなか輪から抜け出せずにいる先輩。
人だかりの中に紛れたまま、私は少し離れた位置からその様子を眺めていた。
先輩がこんなふうに囲まれるのは、いつものことだ。
もう見慣れた光景のはずなのに、今日はなぜだか、いつもより長く感じられる。
ようやく人だかりから抜け出した先輩が、こちらに気づいて小さく頷いた。
でも、周りの目がある手前、それ以上は何も言わずに、そのまま校門のほうへと歩いていく。
私も逃げるように校門をくぐり、駅へ向かって歩き出した。
スマホが震えたのは、学校から少し離れた角を曲がったときだった。
『さっきはごめん。人目あったから、声かけられなかった』
『駅の反対側にあるコンビニ、分かる? 少し時間ずらして、そこで待ってて』
須藤先輩からのメッセージだった。
指示通り、少し時間を置いてから指定されたコンビニへ向かうと、黒縁メガネとマスクで顔を隠した先輩が、目立たない路地の隅で私を待っていた。



