「どうしたの? 海里くん。一年の子なんかと一緒に……」
「ああ。それがさ、二人とも聞いてよ。この子にいきなり抱きつかれた上に、頭突きされてさ。見てよ、このおでこ。めちゃめちゃ痛いんだけどー」
わざとらしく目元に手を当て、泣き真似をする須藤先輩。
「何ですって!? あんた、海里の大切な顔に傷をつけて一体どういうつもり!?」
「ちょっとこっち来なさいよ」
ひっ、ひぃ〜〜っ。物凄い剣幕で、先輩女子がこっちへ向かってくる。
「あの二人、田村さんと鈴木さん。俺の熱心なファンで有名だから。俺が傷つけられたって知ったら、一体何をするか……咲奈ちゃん、もしかしたら生きて帰れないかもよ?」
「……っ」
こんな脅しみたいな言葉に、負けていられるかって思うのに。
なぜか想像するだけで、ゾッとして。頭痛がだんだんと、酷くなってきた。
「さぁ、どうする?」
にっこりと首を傾げる、須藤先輩。
まだ始まったばかりの高校生活。出来れば、卒業まで心穏やかに過ごしたい。
今、先輩たちに目をつけられるのだけは何としても避けたい。
それに、こうして怖い思いをするのは自分だけでたくさんだ。もし他の子まで巻き込んでしまったら、なおさら申し訳ない。
そう思った瞬間、口が勝手に動いていた。
「やっ、やります……」
「え? 咲奈ちゃん、何だって? 聞こえなーい」
絶対、今のは聞こえてたでしょう。もしかして先輩、耳掃除してないの?
「やらせて頂きます。その、目覚まし時計とやらを」
「そう。良かった。話の分かる子で。ねぇ、田村さんたち」
物凄い剣幕で、こちらへとやってきていた先輩たちの足が止まる。



