「いや。なんか今日、いつもより静かだなって」
心の中を見透かされた気がして、指先がひやりと冷たくなる。
「そんなことないですけど」
「ふーん」
先輩はそれ以上追及せず、肩をこつんと軽くぶつけてくる。
「まぁ、いいや。俺は、咲奈ちゃんがこうやって隣にいてくれるだけで、結構癒されてるから」
さらっと言われた一言に、今度は誤魔化す余裕もなくて、私はただ黙って窓の外へ視線を逃がした。
雨が降り続く校庭を眺めながら、私は自分に言い聞かせる。
これは、ただの係の関係。
それ以上でも、それ以下でもない。
そう思わないと、なんだか怖かった。
◇
放課後。教室の窓から見える空は、まだ厚い雲に覆われている。
「咲奈、一緒に帰ろ」
梨沙子に誘われて、私たちは並んで校門を出た。
「そういえば咲奈さ、最近やたら保健室行ってるよね? 部活の子が、咲奈がお昼に保健室入っていくの見たって言っててさ。もしかして、海里くんがらみ?」
心臓が、跳ねる。
まさか、こんなところから噂になっているなんて。
「あ……えっと、まぁ、ちょっとね」
言葉を濁しながら、私はなんとか誤魔化そうとする。
「へー、まぁ深くは聞かないけど。咲奈がそういう顔するの、珍しいなって思って」
「そういう顔って?」
「なんか、隠し事してます、みたいな顔」
痛いところを突かれて、私はぐっと言葉に詰まる。



