翌日の昼休み。
いつも通り保健室へ向かうと、須藤先輩はすでにベッドの上で身体を起こして待っていた。
「咲奈ちゃん、こっち来て座りなよ」
先輩がベッドの縁に座り、隣をぽんぽんと叩く。
「しっ、失礼します」
私は言われた通り、先輩の隣に腰を下ろす。
もう慣れてきたはずのこの距離感なのに、昨日のことがあったせいか、今日はなんだかいつもより意識してしまう。
窓から差し込む雨上がりの光が先輩の横顔に落ちる角度や、時折感じる衣擦れの音まで、いつもより何もかもが鮮明に感じられて、うまく息ができない。
沈黙が、少しの間続いた。
こうして並んで座り、他愛のない話をする時間が、いつの間にか私にとって一日の中で一番大切な時間になっていた。
でも、それに気づいてしまうたびに、心のどこかで小さな警報が鳴る。
昨日、先輩がいなかっただけで、あんなに胸がもやもやした自分がいる。
もし、この時間がなくなってしまったら、私はどうなってしまうんだろう。
田村先輩たちに言われた言葉が、ふと頭をよぎる。
『今はたとえ海里に気に入られていたとしても、絶対に飽きられるときが来るんだから』
……考えすぎだ。これは、ただの目覚まし係としての関係。
そのはずなのに、どうしてこんなにも、この時間を失うのが怖いんだろう。
ふと、先輩の視線が私の横顔にじっと向いているのに気づく。
「……何ですか?」



