保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


田村先輩たちに呼び出されたあの日から、二週間ほどが過ぎた。

期末テストまで、あと一週間と少し。

「うわ。この数学の問題集、範囲広すぎない?」

朝のホームルーム前、梨沙子が机に突っ伏しながら唸っている。

「ほんとだね。私も昨夜、途中で心折れて寝ちゃった」

「咲奈も? 良かった、私だけじゃなくて」

そんな会話をしながら、教室の中はどこか浮足立った空気に包まれていた。

窓の外は今日も雨模様で、梅雨明けはまだまだ先のようだ。

テスト前だからか、休み時間になるとあちこちで「ここ分かる?」なんて声が飛び交っている。

私も梨沙子と参考書を見せ合いながら、午前中の授業をどうにかやり過ごした。

◇

昼休み。いつものように保健室へ向かう。

「須藤先輩、起きて──」

──シャッ。

カーテンを開けると。

「……あれ?」

そこには、誰もいなかった。

きちんと整えられたベッドのシーツが、朝から誰も使っていないみたいに、綺麗なままだ。

「先輩……?」

保健室の中を見回してみるけれど、須藤先輩の姿はどこにもない。

いつもなら、当たり前のようにここにいるはずの人が、いない。

たったそれだけのことなのに、私は変な胸騒ぎを覚える。

どうしたんだろう。