保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


「私も。先輩に会えて嬉しいです」

ここに来て良かったと、心から思う。

さっき、田村先輩たちに言われたことを、話してしまおうか。

そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎった。

でも、それを口にした瞬間、先輩は困った顔をするだろうか。それとも、また私のために何か言い返してくれるんだろうか。

──俺のことを起こしてくれる子は、咲奈ちゃんだけで十分。

さっき聞いたばかりのその言葉を、もし本人の前で持ち出したら、今の穏やかな空気が壊れてしまう気がした。

先輩にこれ以上、面倒なことを背負わせたくない。

だから今は、黙っておこう。

そう心の中で決めて、私は小さく笑ってみせた。

「あ、そういえば、次の撮影っていつなんですか?」

わざと明るい声で、話題を変える。

「え、なんで急に。今度は付き添ってくれるの?」

「し、しませんけど」

「即答かよ」

いつものやり取りに戻ったことに、内心でほっとしながらも。

──田村先輩たちのことは、まだしばらく、私だけの中に留めておこう。

そう決めた自分が、正しいのかどうかは、まだ分からなかった。