「私も。先輩に会えて嬉しいです」
ここに来て良かったと、心から思う。
さっき、田村先輩たちに言われたことを、話してしまおうか。
そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎった。
でも、それを口にした瞬間、先輩は困った顔をするだろうか。それとも、また私のために何か言い返してくれるんだろうか。
──俺のことを起こしてくれる子は、咲奈ちゃんだけで十分。
さっき聞いたばかりのその言葉を、もし本人の前で持ち出したら、今の穏やかな空気が壊れてしまう気がした。
先輩にこれ以上、面倒なことを背負わせたくない。
だから今は、黙っておこう。
そう心の中で決めて、私は小さく笑ってみせた。
「あ、そういえば、次の撮影っていつなんですか?」
わざと明るい声で、話題を変える。
「え、なんで急に。今度は付き添ってくれるの?」
「し、しませんけど」
「即答かよ」
いつものやり取りに戻ったことに、内心でほっとしながらも。
──田村先輩たちのことは、まだしばらく、私だけの中に留めておこう。
そう決めた自分が、正しいのかどうかは、まだ分からなかった。



