保健室の目覚まし係になったら、学校一の沼男に捕まりました


一瞬、田村先輩たちの顔が頭に浮かんだ。

でも、それを話すことはできなくて、私は曖昧に言葉を濁す。

「顔色も、何だかいつもより青いし……」

須藤先輩の額が、私の額にコツンと当てられる。

「うん。熱はないみたいだけど……」

唇が触れ合いそうな距離に、心臓が騒ぐ。

さっきまでの怖さとは全く違う種類のドキドキで、頭がいっぱいになる。

「もし本当にしんどいときは、無理して俺を起こしに来てくれなくても良いんだよ? 咲奈ちゃんの身体が、一番大事なんだから」

「……っ」

先輩に言われ、心の奥のほうがジンとする。

さっきまで震えていたはずなのに、この一言だけで、少しだけ心が軽くなった気がした。

「あれ? なんだか目が潤んでるけど、ほんとに大丈夫?」

「はい。大丈夫です」

「……本当に?」

心配そうな瞳で、じっと見つめられる。

「はい……先輩といると、なんか安心します」

思わずそんな言葉が、口からこぼれ落ちた。

「そっか」

先輩が優しく笑って、私の頭を撫でてくれる。

その温かさに、私はしばらく何も言えずに立ち尽くしていた。

「今日は、いつもの時間を過ぎても咲奈ちゃんが来なかったから。どうしたのかな? って。もしかして何かあったのかな? って、心配だった。だから、顔見せてくれて安心した」