先輩の目覚まし係になってから、早いもので一ヶ月と少しが過ぎた。
梅雨真っ只中の毎日で、傘を差さずに登校できる日のほうが珍しい。
あの日、廊下でファンに囲まれる先輩を見て感じた「その他大勢の一人にすぎないのかもしれない」という不安は、その後も何度か顔を出しては、須藤先輩のいつも通りの態度に触れるたびに、少しずつ薄れていった。
完全に消えたわけじゃない。ただ、今はまだ、その不安と正面から向き合う勇気がなかっただけなのかもしれない。
「はぁ、じめじめする〜」
朝のホームルーム前、梨沙子が窓の外を見ながらため息をつく。
「湿気で前髪決まらないし、教科書もなんか湿ってる気がする」
「気のせいだよ、それは」
「そうかなぁ」
そんな他愛もないやり取りをしながら、私は今日も一日が始まるのを感じていた。
期末テストまで、あと三週間ほど。
そろそろ勉強のことも考えなきゃいけないなと思いつつ、正直まだ実感が湧かない。
◇
昼休み。いつも通り保健室へ向かうと、須藤先輩はすでに起きていて、頬杖をつきながら窓の外の雨を眺めていた。
「あ、咲奈ちゃん。おはよう」
「もうお昼です」
「知ってるよ。雨の日の昼下がりって、なんかこう、俺のことを呼んでる気がしない?」
「しません」
「即答かよ」
いつものやり取りに、思わずくすっと笑ってしまう。
「先輩、雨の日は撮影とかどうしてるんですか」



